iOS/Safari 18の「気を逸らす項目を非表示」機能がもたらす広告業界への可能性

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2024年9月にリリースされたiOS 18およびSafari 18の新機能「気を逸らす項目を非表示」は、ユーザーがウェブブラウジング中に不要なポップアップや広告、バナーなどの要素を手動で非表示にできるという点で、注目を集めています。

この機能は、広告ブロッカーではなく、あくまで「一時的な非表示」として位置づけられていますが、広告業界に与える影響については懸念の声が上がっています。

この記事では、この新機能が広告業界にどのような影響を及ぼす可能性があるか、技術的な側面と業界の動向を踏まえながら考察していきます。

「気を逸らす項目を非表示」とは何か

「気を逸らす項目を非表示」は、Safari 18に搭載された新しい機能です。

この機能を使うと、ウェブページ上のバナー広告やポップアップ、さらには自動再生動画といった気を散らす要素を一時的に隠すことができます。
ユーザーがページメニューから「気を逸らす項目を非表示」を選び、隠したい要素を指定することで、その部分が見えなくなります。

この機能が発表されると、これが広告ブロッカーとして使われてしまう懸念から、広告業界では大きな議論を呼びました。

実際、ヨーロッパの出版団体がティム・クックに向けて書簡を送りつけるなど、かなり大きな騒ぎになっています。

こうした動きを受けてAppleは、この機能は広告ブロッカーとして使うものではないという意思表示をしています。

「気を逸らす項目を非表示」機能を初めて使う時は
「広告などのコンテンツは完全に削除されません」などと表示され、

広告ブロッカーとしての機能ではないニュアンスを伝えようとしている

(上記のように、ポップアップで「広告ブロッカーではないよ」ということをそれとなく伝えているようですが、文言としては少し弱い印象を受けます。)

(この通知によって、広告ブロッカーとして使うのをやめよう、と意思決定する人はほとんどいないのではないかと思います。)

また基本的には、リロードやページ再訪問時には広告が再表示される仕様になっています。

広告インプレッションへの影響

広告業界にとって、最も重要な指標の一つは「インプレッション」、つまり広告がユーザーに表示される回数です。
インプレッションが多ければ多いほど、広告が目に触れた可能性が高くなり、クリックやコンバージョン(購入や問い合わせなどのアクション)につながる可能性も上がります。

「気を逸らす項目を非表示」機能を使って広告が非表示にされた場合、広告の表示そのものが阻害されるため、短期的にはインプレッションの数が減少する可能性があります。

しかし、ここで重要なポイントは、非表示設定する場合でも、広告はすでに表示された後(= インプレッションが発生した後)という点です。

これを考えると、ユーザーが広告を非表示にしたとしても、広告はユーザーとの接点を持った後のため、広告の目的の一つである「ユーザーに視認してもらう」という役目は果たせていることになります。

例えば昔からあるオーバーレイ型(スクロールしてもページ上部/下部にとどまるタイプ)やインタースティシャル(全画面)広告は、バツボタンを押すことで非表示にできるものが多いですが
これらの広告と性質的にはあまり変わらない、という見方もできそうです。

ただ懸念点としては、広告の種類によっては、非表示設定後にページをリロードしても非表示が続くケースが報告されているという点です。

このケースでは、ユーザーが頻繁に見るサイトで非表示設定を行った場合、次回のサイト訪問から継続して広告が非表示のままになるので、広告主/メディアへの打撃が比較的大きくなることも想定されそうな気がします。

広告効果測定への影響

広告効果の測定には、単なるインプレッション数に加えて、ユーザーが広告にどれだけ注意を向けたか(アテンション)や、その後のアクション(クリック、コンバージョンなど)が含まれます。

「気を逸らす項目を非表示」を通じて広告が非表示になった場合、アテンション計測にどのような影響が出るかも焦点となりそうです。

例えば、「気を逸らす項目を非表示」機能を使用中のスクリーンでの広告視聴がアテンションとして計測されるような場合は、アテンションの数値ボリュームはそれほど下落しないのかもしれません。

しかし実際にページで広告に触れる時のようなアテンション計測がされず、広告効果が悪化して見えてしまい、結果的に広告単価の下落につながる、というシナリオも十分考えられるかと思います。

こう言ったケースではメディアの収益減少につながりますし、広告主にとっても広告キャンペーンの最適化に支障をきたすなどの悪影響が生じる恐れがあります。

Appleの立場と今後の展望

Appleはこれまで、ユーザーのプライバシー保護やユーザー体験の向上に注力してきました。この新機能もその一環であり、広告ブロッカーとは一線を画していますが、(繰り返しにはなりますが)一部のケースでは実質的に広告ブロッカーとして機能してしまう可能性があります。

現在、Appleはこの問題について、広告業界に向けての明確な声明やガイドライン、支援策などは出しておらず、今後のアップデートやフィードバックに基づいて機能の改善が図られる可能性があります 。

結論

iOS 18およびSafari 18の「気を逸らす項目を非表示」機能は、ユーザーにとってウェブブラウジングの快適さを向上させる一方で、広告業界やメディアにとっては打撃となる可能性があります。

特に、リロード後も広告が非表示のままになるケースがあることや、広告効果計測にどのような影響を及ぼすがまだわかっていないことなどもあり、広告業界への影響は注視する必要があります。

ただAppleも広告業界への一定の配慮はしていく姿勢は見せているので、今後のAppleの動向にも注目していく必要があるでしょう。

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